日本と比較したアメリカ大学院の授業スタイルと予習/課題

僕は日本とアメリカの両方の国で、大学院の授業を経験しました。

日本では経営工学、アメリカではスポーツと、異なる分野を勉強しているので、単純な比較は難しいです。

ですが、単純な授業スタイルや予習、課題についての違いは説明できます。

今回の記事では、日本とアメリカの大学院の授業や課題についてお話したいと思います。

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日本の理系大学院

 

まずは、僕がいた理系大学院(国立)のお話です。

僕は大学院では「Indurstrial Engineering(経営工学)」を勉強していました。

前提として、日本の理系大学院では授業よりも「研究」に重点が置かれます。授業はただ単位を取るためだけにあり、研究の合間に受けるので、教授や学生にとって特に深い意味はありません。

 

授業スタイル

 

lecture

 

日本の大学院の授業スタイルは「Lecture(講義)」が一般的だと思います。

教授が学生に一方的に話すスタイルで、授業は教科書の内容を解説することが一般的だと思います。

このスタイルでは、予習をしなかったとしても授業の内容を理解することができます。なぜなら、教授が細かく説明してくれるからです。

予習をしないということは、前提となる知識がないので、教科書の範囲を超えた内容やケーススタディーまで理解することはできません。

また、授業中は内容の理解とノートを取ることに精一杯で、質問することまで手が回らないことがほとんどです。質問したとしても、単純な授業や教科書の内容のことで、実際の社会で起きてる問題まで深く言及するような質問をする学生はほぼいないと思います。

授業が疎かになってしまう理由としては、さきほどもお話したとおり、日本の理系大学院では研究が大事だからです。研究をして、論文を書いて学会で発表する。その学会で発表した回数や賞を取った回数が大学院生の真の評価の対象になります。

日本の理系大学院では、授業の成績はほぼテストで決まり、ほとんど場合で学部よりも成績は甘く評価されます。僕のいた大学院では成績は5段階評価(5→1)で、基本的には「5」か「4」しかつきません。

ほとんどの理系大学院でも似たようなものだと思いますが、大学院のGPAは満点の「4.0」が当たり前なのです。留学するときの大学院のGPAは「4.0」付近でいないとまずいです。

ここまでの説明ですと、日本の理系大学院は授業がしっかりないていけど大丈夫なのか?と思われますが、授業でカバーする内容は学生が個々に学習していることが多いのです。なぜなら、研究を通じて必要な知識を勉強しているからです。

ここからはアメリカの大学院(修士課程)では見られない日本の研究についてです。

 

日本の大学院生は一年中、研究室で過ごす

 

lab

 

日本の理系大学院生は例外なく全員どこかの研究室に配属になります。

自分の指導教員(教授/准教授)のもとで、研究テーマを決めて進めていきます。

多くの研究室では、進捗報告会が週に1回あり、そこで今週何をやったのか、どんな進捗があり、次の週は何をするのか報告をするわけです。

仮に土日を両方遊ぶと、5日しかないので、かなり大変なことになります。論文を調べたり、シミュレーションをしたり、実験をしたり。しかも、研究テーマは最新かつオリジナリティのあるものなので、指導教員ですら研究をどう進めていくのか完全に理解はしていません。そのため、常に学生が考えを提案し、指導教員の助言をもとに進めていく必要があります。

例えば、デバイスを作成する場合、今まで論文では見たことのない素材を使うとします。データが一切無いので、実験で理論通りの数値が出なかったとしても、原因がどこにあるのかは仮説を立てて一つずつ潰していくしかありません。もちろん、指導教員も完全な答えを知っているわけではありません。

この研究というのは本当に大変で、理系大学院生は土日も含めて一日中、研究室にいることが多いです。僕も日本の大学院時代は研究室のイメージしかありません。

前期と後期にそれぞれ中間報告会を学部全体で行うので、そこに向けての論文の要旨と発表の準備をしなければいけません。

それが終わったとしても、大学院生のメインイベントである、「学会」が待っています。

僕がいた大学院では、2年間で2回学会に行くことが卒業の条件となっていると聞きました。というのも、きちんと研究をしていれば、1年に1回学会に行くのは普通という考えからみたいです。

学会は基本的に夏休みと春休みに行われることがほとんどです。この学会に向けての論文作成と発表練習は学内の中間報告よりも力をいれますので、夏休みと春休みは基本的に両方潰れます。文字どおり、一年中研究室にいることになります。

それ以外にも、共同研究をするために出張することもあるので、研究を通じて自分が勉強したい分野についての実践的な経験をすることができます。

このように、研究に費やす時間が多いため、授業で勉強しなくても、研究を通じて学ぶことができるのです。

アメリカの博士課程は研究室に所属しますが、修士課程では授業のみで卒業できます。そのため、日本の修士課程を卒業した学生はアメリカ人の修士卒よりも研究をする能力があると見なされます。

 

アメリカの文系大学院

 

次に僕が今いるアメリカの文系大学院です。

アメリカは理系大学院も修士であれば、基本的には文系とほとんど同じです。研究室に配属されないからです。

僕には理系修士のプログラムを受けている友達がいて話を聞いたところ、授業スタイルや評価についてはほとんど同じでした。

 

授業スタイル

 

discussion

 

アメリカの大学院では基本的な授業スタイルは「Lecture(講義)」と「Seminar(セミナー)」の2つです。

Lecture(講義)

日本と同じで、教授が学生に話すタイプのスタイルです。

日本と違うところは、教科書を解説しないことです。

教科書の内容は予め読んでくることが前提なので、わざわざ説明はしません。教授が実際に業界で問題となっていることを、教科書の内容を交えて説明するわけです。

僕の場合はスポーツマネジメントですので、MLBのチームやリーグのビジネスモデルやTV/スポンサー収入、スタジアムの所有権の仕組みを教科書で予習し、授業では実際のデータを見ながらチーム運営などを学んでいくわけです。

アメリカの文系大学院は職歴が出願要件に含まれていますので、学生は社会人経験があります。そのため、授業中の質問も実際に起きている問題や自分が仕事をしていく中で経験したことが多いです。ここが日本と違うところの一つです。

 

Seminar(セミナー)

少人数(10〜20人)でディスカッションをするスタイルです。

予め、教科書や指定された論文を読み、その内容について自分の意見を言います。

論文自体はケーススタディーがほとんどであり、良かった点や改善すべき点、他のスポーツや国では実用的なのかをディスカッションします。

ここでも、自分の国や職歴などの背景をもとに意見を言うことが多いです。僕の場合は日本のスポーツビジネスやIT企業での社会人経験をベースにこうあるべき!と発言することが多いです。

 

この「Lecture」「Seminar」には授業と課題だけでなく、プロジェクトも含まれています。個人での研究やグループワークのことです。これらは日本の大学院の「研究活動」に当てはまります。

これらの課題は授業外にやらないといけないので、留学生にとっては大変です。なぜなら授業の予習と課題で手一杯なのに、さらにプロジェクトを進めていかないといけないからです。

予習や課題は一夜漬けでも終わらせることは可能ですが、プロジェクトはそうはいきません。そのため、初回の授業の段階で、プロジェクトについては内容やスケジュールを確認し、少しづつ進めていく必要があります。

 

Fallセメスター(秋学期)に受けた授業の課題一覧

 

僕が実際に受けた授業の予習と課題についての情報を一部公開してみます。

International Sport History & Governance

授業回数予習課題
1なし(イントロ)なし(イントロ)
2Book01: Ch 1~3(71 pages)
Book02: Ch 1(14 pages)
Paper(500~1,000 words)
3Book01: Ch 4~6(84 pages)Paper(500~1,000 words)
Other Paper(500~1,000 words)
4Book01: Ch 7~9(64 pages)Paper(500~1,000 words)
5Book01: Ch 10~13(82 pages)Paper(500~1,000 words)
6Book03: Ch 1~5(145 pages)Paper(500~1,000 words)
Research Abstract
7Book03: Ch 6~10(165 pages)Paper(500~1,000 words)
8Book02: Ch 4, 7(34 pages)Paper(500~1,000 words)
9Book02: Ch 10, 11(34 pages)Paper(500~1,000 words)
Research Outline
103 Articlesなし
113 Articlesなし
12なしなし
13なしなし
14なしResearch Paper(10~12 pages)

 

この授業はセミナータイプの授業です。毎回教科書のリーディングの他にペーパー(500~1,000 words)を提出する必要があります。

このペーパーはリーディングした内容の要約ではありません。リーディングした内容について、関連する問題や解決策について新規性やオリジナリティを含めてペーパーを書きます。

そのため、単純に誰かの論文を引用して解決策を提案するのはダメということです。色々な論文を読み、将来を見通して自分なりの意見を述べる必要があります。

なので、500~1,000 wordsでもリサーチ、ライティングなどに相当な時間がかかります。

このペーパーをもとに、授業ではディスカッションをします。リサーチをして、ペーパーにまとめることで、より洗練されたレベルでのディスカッションができるわけです。

また、これとは別にリサーチプロジェクトもあります。

自分でリサーチトピックを見つけて、授業外でリサーチを進めます。この科目では、6回目の授業でAbstract(要旨)を、9回目の授業でOutline(概略)を提出します。

通常の課題だけで手一杯なのに、少しずつ進めていかないといけないので、最後のほうは本当に大変でした。

この授業のリサーチペーパーはWordで10~12ページで提出します。アメリカの提出物は基本的にAPAスタイルで書きます。タイトルページや参考文献のページはページ数にカウントしません。

【最新版】APAスタイルで書く参考文献(Reference & In-Text)の公式フォーマット
アメリカの大学では、論文を書くときにAPA Styleというフォーマットを指定されることが一般的です。APAとは「American Psychological As...

 

参考までに僕が提出したリサーチペーパーについて。

  • ページ数:21ページ(タイトル1ページ、本文12ページ、参考文献&付録8ページ)
  • ワード数:12,565 words
  • 参考文献:33個

 

International Business and Finance of Sport

授業回数予習課題
1なし(イントロ) 
2Book: Ch 1, 2(56 pages) 
3Book: Ch 3, 4(52 pages) 
4Book: Ch 5, 6(60 pages)Quiz(Ch 1~4)
5Book: Ch 7, 8(43 pages) 
6なし(Midterm)Midterm(Ch 1~8)
7Book: Ch 9~11(98 pages) 
8Book: Ch 12(27 pages)
1 Article
 
93 Articles 
10Book: Ch 15(42 pages)Quiz(Ch 9~15)
11Book: Ch 14(41 pages)
1 Article
 
12プレゼン(グループワーク) 
13なし(Final Exam)Final Exam(Ch 1~12, 14, 15)
Research Paper(10~15 pages)

 

この授業は講義タイプの授業になります。

基本的には教科書のリーディングだけが求められます。

「Quiz(クイズ)」という小テストが2回、Midterm(中間テスト)が1回、Final Exam(期末テスト)が1回あります。

Final Examの範囲は授業でやったことのすべてになりますので、教科書や配布された論文などはすべて対象になります。

さらに、この授業には2つのプロジェクトが含まれています。

1つ目がスポーツの施設管理についてのグループワークです。既存スタジアムの改修の提案書をファイナンスの観点で作ります。

パワーポイントの資料作成と発表練習はもちろん授業外にやります。

2つ目が個人でのリサーチペーパーの提出です。先ほどの授業と似ています。

実際に行われたスタジアムの建設や改修をピックアップして、ファイナンスの観点でペーパーを書きます。

こちらもwordで提出する必要があり、ページ数は10~15です。

僕が実際に提出したものについて。

  • ページ数:19ページ(タイトル1ページ、本文12ページ、参考文献&付録6ページ)
  • ワード数:13,371 words
  • 参考文献:21個

 

結局のところ、大変ですけど、僕は好きでスポーツを勉強しているので、まったく苦にはなっていません。

日本と違うビジネスモデルを見つけたり、今後どのような分野が発展していくのかをリサーチすることは僕にとっては楽しくてたまらないです。

英語には「Passion(情熱)」という言葉があり、いかに自分のやることに情熱を注げるのかが大事になります。

アメリカでは、好きでもない分野の論文を大量に読んだり、ペーパーを書くなんてことはしません。絶対に続かないですし、良い成績は取れません。

ここが日本とアメリカの違うところかなと思っています。

自分の情熱を傾けられるような分野を見つけて、そこに向かっていく。そうすればバイトやサークルをしなかったとしても、勉強だけで大学生活は十分楽しいんじゃないかなと思います。

また、おれは大学の4年間、精一杯勉強したぞ!と胸をはって言えると思います。

こんな感じで終わりたいと思います。

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